前記事の続きです。Blue Öyster Cultに関する素晴らしい本を2冊目をご紹介します。こちらもBlue Öyster Cultマニア向けの本です。
タイトル 『 Agents of Fortune: The Blue Öyster Cult Story』
著者 Martin Popoff
出版社 Wymer Publishing (2016)
カナダ出身の著名な音楽評論家である著者のPopoff氏は、今までに多くのアルバムレビューやコラムを手掛けてきました。ロックバンドの伝記本を多数世に出したことでも知られています。White Snake, Metallica, Rush, Scorpions, Thin Lizzy, Black Sabbath, Deep Purpleなど。NWOBHM (New Wave of British Heavy Metal)盛衰についての本も執筆されています。まさにロック界の生き字引的な評論家でしょう。氏の手掛けたロックバンド伝記の中でもこの本はとても評判が良く、カルトマニアにとって教科書のような存在であると感じます。
特筆すべき点は、硬派なスタイルであると思います。伝記本的でありながら、メンバーのゴシップやここだけの話・・がまったく書かれていません。バンドの音楽、作品、その歴史についてのみです。実際に起こったことを述べ、証言を交えながら、著者の考察も盛り込んであります。バンド創成期からライブアルバムの2004年にリリースされたA Long Day’s Night(ライブ盤)まで、長いマラソンを走るように展開していくのです。
正直に申し上げると、最初のうちは読み進めるのがかなりしんどかったです。それは、偏に、管理人の英語力不足(=単語力不足)のため。大学を卒業してから今まで200ぺージ以上のドキュメンタリー系の洋書を読む機会がなく、久しぶりのチャレンジでした。しかしながら、読み進めていくうちに、なんともいえない癖になるような面白さを感じました。「読ませる本」なのです。
硬派なスタイルの本であると先述しましたが、硬派でありながらとてもビビッドな印象もあります。不思議な魅力のある本で、ストーリーに吸い込まれるように読み進めることができました。巻末にインタビューの長いリストがありますが、Popoff氏が長い時間をバンドと共にして、メンバーから生きた言葉を引き出してきたかがよくわかります。バンドのメンバーだけでなく、かつてのバンド仕掛け人であったSandy PearlmanやRichard Meltzerのインタビューもクレジットに記載されています。バンドの外側、内側、多方面から客観的に証言を得て書き上げた書です。メンバーの赤裸々なコメントも多く、バンドにファンタジーのようなものを持ってる方は(Blue Öyster Cultのファンではあまりそのような方はいないと思いますが)心を落ち着けて読んでいただきたいと思うような場面もありました。
数多くのインタビューが載せられており、複数の登場人物がいます。話が交差しているときがあり「え?これ、だれが言ってるの?」と読み直す時もありました。それだけ臨場感のある文章なのです。また、「あ、これ、年月が経ったから言えることだね。。。」というような裏話も出てきます。例えば、Donald RoeserがBlack Sabbathについて語るなど、ヘヴィ・メタルファンとしては見逃せない発言もありました。これはとても面白いので、また別途、記事にしたいと思います。
50年の活動期間がすべて順調だったのではなく、当然、山谷がありました。メタリカのAstronomyのカバーで Blue Öyster Cultを知り興味を持たれた若いファンの方、また、バンドとは40年の付き合いという楽曲を知り尽くしたベテランファンの方にもどちらにもお勧めいたします。文頭にマニア向けと書きましたが、カルト好きな皆様にとって、ええ??そうだったの?という新鮮な発見があると思うからです。とにかく、素晴らしい本です。
そして、管理人の切なる願いですが・・日本の出版社の方、どなたでもいいので、この本の日本語版の出版を検討していただけないでしょうか?日本語化した情報量の少ないバンドです。プロの方の翻訳で本を読みたいと管理人は心から願っております。 Blue Öyster Cultの参考書として英語版だけでなく日本語版も手元に置きたいですよね!!
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