Blue Öyster Cultの最新作”The Symbol Remains” について。若手メンバーRichie Castellanoの活躍ぶり。

ブルー・オイスター・カルト(Blue Öyster Cult)

今回は2020年にリリースされたブルー・オイスター・カルトの最新作と期待の若手メンバーRichie Castellanoの活躍について語ります。クラシックなカルトがお好きな方、本作でBlue Öyster Cultを知ったお若いロックファンの方にも目を通していただければ幸いです。

前作リリースは2001。
2001年に”Curse Of The Hidden Mirror”(日本盤未発売)をリリースした後、Blue Öyster Cultの活動が大きく伝わることはありませんでした。2005年頃に「超若いベーシストが加入した」と風の便りで聞いたものの、アルバムリリースはなし。2013年にはオリジナルメンバーのAllen Lanierが鬼籍に入ったことが報じられました。この頃、管理人は育児と仕事と家事と自身の病院通いで忙殺されており、手持ちのカルトのレコードやCDを積極的に聴こうとすら思えない状態。しかしながら、やはり、Allenが他界したことは堪えました。カルトの精神的支柱であり、類まれなる才能の持ち主だった博識なAllen。彼の存在なしでバンドは成り立たないと感じたのです。ロック界をしぶとく生き抜いてきたBÖCもこのままレジェンドとして去っていくのかなと寂しく思いました。

19年ぶりの新作リリースを耳にしたものの・・・
2020年にBlue Öyster Cultが19年ぶりに新譜をリリースすると知り、驚きと嬉しさの反面、なんともいえない負の感情も沸いてきました。まさか、BÖCにかぎって、~昔の名前で出ています。懐メロ満載の思い出のアルバムリメイク~はないはずだが・・・万が一そうなるぐらいならば、いっそのこと出てこないほうがいい。これが私の率直な思いでした。ロック界の大御所でありながらも異端を貫いたカルトにだけは、最後までそのスピリットを持ち続けて欲しいという勝手な希望があったのです。尊敬するバンドなだけにそのように感じてしまったのです。

心配は杞憂に終わる。BÖCはしぶとく健在だった!
新曲の配信があっても素直に聞くことができずためらっていたところ、SNSでフォローさせてもらっている音楽通の方の投稿が目にとまりました。いつもセンスの良い素敵な発信をされている方です。「あの方がBÖC新譜を勧めるなら聞いてみよう」と思えたのです。Youtubeで配信された”Tainted Blood”を聞いて私は心の中でこうべを垂れました。「一瞬でも疑ってごめんなさい。どこからどうみてもBÖC。新鮮で新しい雰囲気も纏っている!やったね!!」前作から19年経ってもカルトはカルト。タイトルの”The Symbol Remains”が示す通り、バンドはしぶとく健在だったのです。

シンボルが意味するもの
カルトのファンならシンボルの意味するところがすぐにわかります。バンドのシンボルマークである変形十字です。The symbol of Kronos と呼ばれおり、古代ギリシア神話の時の神、時を神格化したもの。ラテン語ではChronus、英語ではChronos、もしくはSaturn。このシンボルは、あたかも当然行われる儀式のようにBÖCのディスクジャケットに律儀に出現してきました。シンボルの十字を全面に出すというよりは(デビュー作、2作目は十字がジャケット表中央に配置されていますが)デザインの一部としてさりげなく、時に、わざとわかりにくく配置されています。十字の出現からもバンドのこだわり、個性を感じますね。

ディスクジャケットに見られるシンボルマーク例、数字はリリース年
1段目左から
『狂気への誘い』1972 ジャケット中央
『暴虐と変異』1973 ジャケット中央

2段目左から
『ミラーズ』1979 ジャケット中央、鏡の下
『タロットの呪い』1976 タロットカードを持つの男性の右手人差し指の先
『呪われた炎』1981 ジャケット裏中央
『ナイト・レボリューション』1983 ジャケット右下、壁の上

3段目左から
『オカルト宣言』1974 メッサーシュミット(ME262)尾翼
『ザ・シンボル・リメインズ』2020 ジャケット中央
『地獄の咆哮』1975 車に取り付けられた半旗
『ヘヴン・フォービッド』1999 美女の持つ杖の先

“The Symbol Remains” 最新作で出現した大きなシンボル
『ザ・シンボル・リメインズ』に出現するシンボルは大きく力強いデザイン。今までのシンボルの出現の仕方とは一線を画していますね。19年音沙汰はなかったがカルトは健在でそのスピリットは変わらない。アルバムタイトルとディスクジャケットはバンドの宣言そのものだと感じます。破壊と再生を感じさせるデザイン。とても美しい。

“The Symbol Remains” 『ザ・シンボル・リメインズ』管理人の所感
収録曲とヴォーカル
1 “That Was Me” / Eric Bloom 3:18
2 “Box in My Head” / Buck Dharma 3:46
3 “Tainted Blood” / Richie Castellano 4:17
4 “Nightmare Epiphany” / Buck Dharma 5:30
5 “Edge of the World” / Eric Bloom 4:52
6 “The Machine” / Richie Castellano 4:14
7 “Train True (Lennie’s Song)” / Buck Dharma 3:57
8 “The Return of St. Cecilia” / Richie Castellano 4:12
9 “Stand and Fight” / Eric Bloom 4:48
10 “Florida Man” / Buck Dharma 4:08
11 “The Alchemist” / Eric Bloom 6:00
12 “Secret Road” / Buck Dharma 5:24
13 “There’s a Crime” / Eric Bloom 3:37
14 “Fight” / Buck Dharma 3:12
Total length: 61:06

デビューから50年近く経ってリリースされた『ザ・シンボル・リメインズ』は19年のブランクを感じさせない素晴らしい作品です。多彩で楽しい。どちらかというとカルトの楽曲のポップな面が出てていますが、どの曲にもBÖCらしさが垣間見えます。異端を貫いたカルトらしさは健在。パティ・スミスが作詞をした”Career of Evil”のセルフオマージュではないかと思われEricの本気を感じる #1 “That Was Me” 、往年のカルトファンなら一度聞いて好きになるであろう #11″The Alchemist”、ヘヴィ・メタル愛好家にもウケそうな #9″Stand and Fight”。そして、特に耳にひっかかり管理人の印象に残った#3”Tainted Blood”。透明度が高く力強くて綺麗なバラード。今までのカルトにはなかった個性を感じます。オリジナルメンバーであったBouchard兄弟、Allenの不在によって埋められなかったバンドの空間がこの曲によって一気に満たされた感じがしました。進化系のBÖCを体感した瞬間です。

インテリの若きマルチプレイヤー、Richie Castellano
“Tainted Blood”でヴォーカルを担当しているのはRichie Castellano。2004年にバンドに加入したベーシストで最年少のメンバー。バンドのオフィシャルサイトを調べたところ詳しい経歴(英語)がありました。
http://www.blueoystercult.com/bocBand.html

要約すると
・パーチェス大学音楽院で修士号取得。1996 年バークリー音楽大学のソリスト賞を受賞。1998 年ソングライターの殿堂、ソングライティング コンペティションで優勝。
・マルチ・プレイヤー
・2000 年 代役FOH(フロント オブ ハウス エンジニア、客席内のオペ卓エンジニア)を務め、BÖCに参加。
・2004 年 10 月にフルタイムのベーシストになる。Allenの引退によりベースからギター、キーボード、ボーカルに担当変更。
・非常にエネルギッシュなパフォーマンスが特徴的。

すごい優秀!

こちらがRichie Castellanoのオフィシャルサイト。
https://richiecastellano.com/about/
1980年にブルックリンで音楽一家に生まれ、若い頃から音楽シーンで頭角を現してきたた様子がわかります。非凡な才能の持ち主なのですね。

Richie Castellanoが手掛けた曲は秀逸。
前述した”The Alchemist”はRichieが手掛けた曲。ちょっと語弊がある言い方ですが、オリジナルメンバーでない40代の若手が、往年のカルトファンに一番人気の曲を作ったのかと思うと管理人は感慨深く思います。 そして、もう一つの管理人お気に入りは”Edge of the World”もRichie作。この曲は「カルトらしくない」と賛否両論があったようですが、管理人は大好き。力が抜けた感じがほどよく、音処理もセンスが良いと感じます。陰謀論のブラックなムード満載になりかねないテーマを扱っているがオカルト沼に陥らず、今時の「こなれ感」もある(おそらく、この「こなれ感」がカルトマニアには不評だったのでは?と管理人は思う)”The Machine”もRichieの作品です。こちらはギターの入れ方、ヴォーカルとのかけあいがBÖCの得意とする路線でありながら、Richieの声により懐メロ感がゼロなのが良いですね。兎に角、すごい。優秀な若手Richieの活躍でバンドの未来は明るいと感じるではないですか!!

“The Alchemist” https://www.youtube.com/watch?v=j4TFfTSUbto
“Tainted Blood” https://www.youtube.com/watch?v=8H0iX-_Vts0
“The Machine” https://www.youtube.com/watch?v=vdgngVMoBmc
“Edge of the World” https://www.youtube.com/watch?v=vWbFFUlCnlc

なんて恐ろしい新人・・・Richie Castellano!!

“Tainted Blood”のクレジットは Bloom, Castellanoとあり、エリックが主導なのかもしれません。いずれにしても、この曲はリッチーの声でなければあの雰囲気はでず、曲は成りたたなかったでしょう。リッチーがヴォーカルを担当し全面に出てこれたのは、二人のベテランEric BloomとBuck Dharmaの英断によるものだと思います。自分たちは後方支援にまわり、若手をスポットライトの中心に置いたのです。20年近くBÖCが隠し持っち温存してきた最終兵器、Richie Castellano。今後、Blue Öyster CultでRichieがどのよう活躍していくか本当に楽しみです。

2020年に19年ぶりにカルトの新譜がでて、秀逸なアルバムで、そのことを2022年に管理人がブログに書いている・・喜ばしいことですね!次回は進化したBÖCを象徴する曲”Tainted Blood”について語ります。引き続きお付き合いいただければ幸いです。

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