Blue Öyster Cultの最新作”The Symbol Remains”から『Edge of the World:エッジ・オブ・ザ・ワールド』対訳 

ブルー・オイスター・カルト(Blue Öyster Cult)

前回の更新から5か月以上経ちました。その間に、仕事でもプライベートにも多くの変化がありました。今年の元日には、実父が闘病の末に他界。家族にはいまだに悲しみがありますが、いつまでもそこに留まっていることはできません。父が身をもって教えてくれたことを大切にして進んでいきます。

父が教えてくれたこと。私たちがこの3次元空間にいられる時間は限られている。しかし、そこに儚さを感じるのは違う。なぜなら肉体は魂の入れ物であり魂は別のところにある。この世はさしずめ舞台装置のようなものかもしれない。ヴィヴィッドな経験を積むためにここに私たちはいる。私も父を見習って、人生の幕がおりるまで3次元で頑張ってみようじゃないか。そのような心境に至りました。父に「やりたいことはこの世にいるうちに大いにやりなさい」と後押しされていると感じます。2月末には15年ぶりにヘヴィ・メタルのライブ観戦に復帰しました。ブログもひっそりと再開。ここからまた旅を続けていきたいと思います。

ブログ再開。この曲について語りたい!
世相がガラッと変わって3年。今だからこそこの曲を取り上げたいと思います。

3年間に本当に様々なことが起こりました。自分語りで恐縮ですが、先に進むためにこのまま吐き出させていただきます。私自身も家族ももれなく、渦に巻き込まれそうになりました。生き残るために情報を集めましたが、私が予想していたものと出てきたものが全然違った。頑丈だと信じていた足場が一瞬にして崩れ落ちるような感覚を覚えました。とんでもない、ありえない、自力ではどうしようもない。ひどく落ち込み、悲しみ、そして怒りも感じました。喜怒哀楽に没入し我を忘れたこともありました。

私が踏みとどまれたのはなぜか?極めてシンプルです。子どもがいたから。何があっても母親であることから降りることはできない。まだ自立していない子どもを残して先に逝くことはできないのです。立ち向かう相手が大きいか小さいかは関係ない。Long Live and Rock n Rollだ。自分も子どもも生き残ってやろうではないか!開き直って腹をくくった母親ほど強い者はありません。私は失敗を繰り返しながらも、喜怒哀楽の渦からすっと離れるすべを徐々に身に着けてきました。渦に飲み込まれないように。子どもと自分を守りたい一心で。そして冷静になると「違う」世界が見えてきました。その違いを知りたいという強烈な探求心を抑えつつ、渦に巻き込まれないように淡々と過ごすうちに、心境が変わりました。ゆるぎない傍観者の視点を持ちながら、この世でしっかり経験を積みたいと願うようになりました。

最新の音響システムの映画館で映画を観ているような不思議な心境です。喜怒哀楽に没入していたときには見えなかった世界が、別の方からみると映像になって浮かび上がってきたような気がしたのです。このように視点の逆転を意識したときにふと思いました。あの曲もこんな感じのことを歌っているのか?と。Blue Öyster Cultが2020年にリリースした”The Symbol Remains”の”Edge of the World”の一節、”Follow me down the rabbit hole”が脳裏に浮かんだのです。激烈な体験を経た今だからこそ、じっくりと味わって聞きたい曲だと感じます。

“Edge of the World”『エッジ・オブ・ザ・ワールド
作詞・作曲はRichie Castellano、ヴォーカルはEric Bloomが担当。こちらも今までのBÖCではなかった雰囲気の曲です。さりげなくキャッチ―で聞きやすい。カルトらしさは?勿論あります。地球を舞台にしたスケール感、怪しい雰囲気、訴えかけてくるメッセージと共に突き刺ささってくる存在感のある曲です。

5曲目の”Edge of the World”はパワフルなギターリフでスタートします。キャッチ―な歌メロでは余分な演奏をそぎ落とし、Ericの説得力があるVoが引き立つような構成。わざと抑えたようなトーンのコーラスがミステリアスで耳にのこります。弾けた短いギターソロを経て、またもコーラスパート。コーラスパートとEricの歌が自問自答の掛け合いのよう。Richie Castellanoが歌詞、音楽も担当しており、彼の世界観が全面に出ている曲と言えるでしょう。今までのカルトにはないスタイルです。管理人はとても新鮮に感じて大いに気に入りました。

白うさぎを追え!
この曲を初めて聞いた時に私は『地獄の炎』(3rdアルバムに収録されている”Flaming Telepaths”) を思い出しました。BÖCの楽曲で主人公がかなりしんどい設定にいる曲といえば『地獄の炎』だからでしょうか?実際に『地獄の炎』と『エッジ・オブ・ザ・ワールド』の世界観には共通点があり、『地獄の炎』の後継作品が『エッジ・オブ・ザ・ワールド』であると考えるととても面白いのです。

ストーリーはわかりやすくシンプル。言論統制が行われている中で真実を追いかけていた人が陰謀(論)に取り込まれていく。視点が転換したことで今まで信じていた世界が崩れていく、それを客観的に世界の端”edge of the world”からみる。もう二度ともとには戻れないだろう・・・という内容。『地獄の炎』ではレ・ザンヴィジブルの鉄板ジョークを錬金術師が理解できた(=視点の転換)がありました。『エッジ・オブ・ザ・ワールド』では、白うさぎを追った果てに主人公が視点の転換を得た様子が描かれています。そして、主人公の他に、主人公を陰謀に導いたであろう別の存在、白兎らしき”me”が登場します。EricのVoが主人公の独白、呼応するコーラスパートが”me”のセリフとも考えられます。”me”は主人公を目覚のきっかけを与えた人物なのでしょう。

歌詞では”Follow me down the rabbit hole”とあり、白うさぎと限定していません。しかし、白うさぎであることは自明です。このシチュエーションは『不思議の国のアリス』の冒頭部分、アリスが白うさぎを追ってうさぎの穴に飛び込み落ちていく場面を思い出させますね。話はそれますが、読者の皆さまは映画『マトリックス』をご覧になりましたでしょうか?ネオの物語はパソコンに映された文字「白うさぎを追え」が発端となり、白うさぎのtattoを追うことでネオは仮想世界であるマトリックスから脱出します。ここから転じてたのは定かではないですが、インターネットの陰謀論界隈では、真の世界に行く際には白うさぎを追うこととなるそうです。この流れを念頭に置いて曲を聞くと『エッジ・オブ・ザ・ワールド』で描かれている世界の解像度があがると思います。歌詞では主人公が2回目に誘拐されたときの描写があり、実際に陰謀に巻き込まれ被害にあった設定です。“the truth”と”facts”が別のものであることを強調する表現もありますね(”You want the facts Now listen to me, Only the truth can set you free”)ここの部分は管理人的にインパクトが強く、かなり面白いと感じました。

FactsとTruth                                      事実は、ある人のフィルターを通ってから、その人にとっての真実になるのです。“me”は「事実を知りたければわたしの話をききなさい」「真実がおまえを精神的に開放するぞ!」と言います。自由を得るためには私が語る事実を自分で意味付けして真実を見つけろと。”me”の人は主人公に大いに影響を与え生き方まで変えてしまったようですが、それはあくまでも主人公の選択。なぜなら、”me”の人は事実を伝えただけだから。解釈と落とし込みと行動は主人公がしたものであり、責任は主人公にあるのです。

意味付けは自分の脳のフィルターを通るので、真実には必ず自分の過去から現在までの思考パターンが投影されます。たこが自分の足を食べてるようなものだと管理人は思いました。主人公は真実を求めて陰謀論に飛び込み新しい境地を求めているのです。ここに大きな欺瞞があります。真実を求めれば求めるほど、新しく知りたいことから遠ざかるということです。でも”me”の人はそうするように促す。管理人は実生活でもネットでも見たことがあります。義憤にかられ真実を追求しようとしてた善良な人たちが、沼の深みにはまったように終わりのない螺旋をくるくると回る姿。真実を追求するときに得られる感情の揺さぶり、喜怒哀楽にどっぷりとはまり、もはや当初の目的すら忘れてしまっているのです。情報を受け取ることで引き起こされた喜怒哀楽は「生きている」「すごいことをしてる」錯覚につながります。”me”の思う壺でしょう。“me”が体制側なのか陰謀論側なのかトリックスターなのかはわかりません。この曲は、ギリギリのところをとても巧みにさりげなく表現しています。極めて秀逸だと思います。

曲の最後のリフレインでは、主人公の古い世界観が崩壊・炎上する様子を一緒に見ようと誘っています。この”me”は相当にいけすかない悪い奴だと伺えます。読者の皆さま、思い出しませんか?レザンヴィジブルを!!デスディノーヴァの人生を覆しておきながら遠くから見て笑っていましたよね。この曲の”me”とレザンヴィジブルはとても似てる。そして、主人公と『地獄の炎』の錬金術師、またの名をデスディノーヴァともイメージが重なります。

これらはあくまでも管理人の個人的な見解です。ここまで解釈を広げられる、変幻自在な歌詞と曲を作り上げたRichie Castellanoの才能に脱帽です!

以下、対訳です。
“Edge of The World” 『エッジ・オブ・ザ・ワールド』
収録アルバム The Symbol Remains 2020年リリース
作詞・作曲 Richie Castellano リードボーカル Eric Bloom

How many truths can you hold on to?
How many lies have you been told?
How many times have you been under
Another system of control?

どれだけ多くの真実にすがりつくことができる?
どれだけ多くの嘘を耳にしてきた?
どれだけの回数 制御システムの支配下にあった?


Trusting everything you read
Lost in your conspiracies
I want to believe

目を通したものすべてを信じ込み
陰謀論で我を忘れる

私は信じたいんだ! 

Cover ups and blacked out lines
Everything is classified
Follow me down the rabbit hole

隠蔽工作、墨で塗り消された文章
全てが機密情報扱いだ
白うさぎの穴をくだって私を追いかけてきなさい 

You want the facts Now listen to me
Only the truth can set you free

事実が欲しいなら私の言葉を聞きなさい
真実だけがあなたを自由にしてくれる

Meet me at the edge of the world
To watch it all burn
Forget what you learned

世界の果てで待ち合わせて
そこで全てが燃えていくのを観ようではないか
今まで学んだことすべてを忘れるんだ

Meet me at the edge of the world
To watch it all burn
You’ll never return

世界の果てで待ち合わせて
そこで全てが焼きつくされるのを観ようではないか
もう後戻りはできないんだよ

The second time I was abducted
I tried so hard to stay aware
With all their evil drugs
Coursing through my veins
I lost my inhibitions
To the darkness in their stare

2度目に拉致されたときに
警戒を怠らないようにと一生懸命努力した
でも、血管を流れてく奴らの忌々しい薬のせいで

やつらの視線を感じつつ闇への制御を失ってしまったんだ 

Trusting everything you read
Lost in your conspiracies
I want to believe

目を通したものすべてを信じ込み
陰謀論で我を忘れる
私は信じたいんだ!

Cover ups and blacked out lines
Everything is classified
Follow me down the rabbit hole

隠蔽工作、墨で塗り消された文章
全てが機密情報扱いだ
白うさぎの穴をくだって私を追いかけてきなさい

You want the facts Now listen to me
Only the truth can set you free

事実が欲しいなら私の言葉を聞きなさい
真実だけがあなたを自由にしてくれる

Meet me at the edge of the world
To watch it all burn
You’ll never return

世界の果てで待ち合わせて
そこで全てが燃えていくのを一緒に観ようではないか
今まで学んだことをすべて忘れるんだ
 

Meet me at the edge of the world
To watch it all burn
You’ll never return

世界の果てで待ち合わせて
そこで全てが焼き尽くされるのを観ようではないか
もう後戻りはできないんだよ


もう一度聞いてみましたが、キャッチ―なリフとコーラスパートとEricの歌があたかも掛け合いのように組み込まれていて耳に残りますね。Richie Castellanoが歌詞、音楽を担当しており、彼の世界観が全面に出ている曲でしょう。すかすかで短くて簡単なのはBÖCじゃないとおっしゃる方もいるかもしれませんが、逆に管理人は訊きたいです。どんなのが今時のBÖCとしてふさわしいのか?と。1967年から続いてるバンドがコロナ禍最中に世に送り出した曲です。一連の騒動とともに私の心にはしっかりと刻まれました。

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。今回は自分のことを少し書きすぎました。次回以降は曲の対訳に注力して進めていこうと思います。引き続きお付き合いいただければ幸いです。

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