自分のルーツを確認 “Remember, remember, where you came from”私はヘヴィ・メタルが好き!(2) LOUD PARK 2023 PANTERA

ヘヴィ・メタル Heavy Metal

前回更新からかなり時間が経ってしまいましたが、引き続き今年の春に観たヘヴィ・メタルのライブにつこいてお伝えします。

ヘヴィ・メタルの祭典 LOUD PARK 2023
MEGADETHの武道館公演から1か月後、3月26日に幕張で行われたLOUD PARK 2023に出向きました。MEGADETHで感覚を取り戻したとはいえ、LOUD PARKは別の意味でハードルが高いのです。「ラウパ」と呼ばれるLOUD PARKは日本のヘヴィ・メタルフェスで2006年から2017年まで続き、今年は一年限定での復活開催となりました。伝統的なヘヴィ・メタルだけではなく、多様化するメタル、メロスピ、スラッシュ、デス、ゴシック、メタルコア、ラウドロック、ハードロックなど多くのバンドが出演。この日のために全国から熱心なメタルヘッズが集まるのです。フェス公認グッズやバンドのロゴ入りグッズを購入するために早朝から列を作るファンも多く、スタンディング形式で終日ヘヴィ・メタル漬けの一日。フェスですから楽しみ方は個人個人で色々ですが(=最前列で休憩なしで全通、ビールを飲みながら後方で友人と楽しむ、後ろで床に寝て爆睡など)メタルの愛好家のためのフェス。ファンの熱量が凄まじいことで知られています。生半可な気持ちでは参加できません。https://www.loudpark.com/

終日開催、スタンディング形式、遠方での開催。持病が悪化し不安が募りましたが、やはり、PANTERAとKREATORを絶対に観たいという気持が勝ちました。夫に自分の気持ちを伝えたところ、午前中はあきらめて家で休み、午後から参加。会場まで車で送るからダメもとで行ってみたらどうか?と。理解のある夫に心から感謝です。会場に着いた時には「顔つきがいつもと違うね(笑)」と夫に言われるほどに回復。愛用しているKREATORの赤いロゴ入りのTシャツを着て(PANTERAのTシャツは持参)会場に乗り込みました。

*LOUD PARK 2023はステージとアーティストの撮影不可でした。文章でお伝えします*

会場に着いたときにはAMARANTHEが演奏中。物販エリアに直行し係員の方におそるおそる訊いてみました「KREATORさんはトートバッグ以外全部完売。PANTERAさんは全品完売です!」と爽やかな笑顔で言われました。そりゃそうよねえ、こんな遅い時間に来て残ってるわけがないし・・・改めてメタルファンの熱意を感じながら、AMARANTHEの演奏が行われている場内に入りました。音が大きい!メタルTシャツ着てる人だらけ!当たり前ですが久しぶりにフェスに参加する自分にはものすごく新鮮に感じられました。

LOUD PARK 2023 PANTERAのTシャツ。メタルバンドの赤いTシャツは珍しいですね。当日完売で後日通販で購入しました。こちらは届いたときのままつるしてあるものです。私は着用直前に裏返してアイロンをあてて、しわをとります。

LOUD PARK 2023 Tokyo 出演アーティスト
PANTERA
KREATOR
NIGHTWISH
STRATOVARIUS
CARCASS
AMARANTHE
BLEED FROM WITHIN
OUTRAGE
H.E.R.O.
JASON RICHARDSON & LUKE HOLLAND
PHANTOM EXCALIVER(オープニング・アクト)
BRIDEAR(オープニング・アクト)

PANTERAに思うこと ヘヴィ・メタルの”極み”
LOUD PARK 2023でトリを務めたPANTERA。私が生涯を通して好きな4つのバンドの一つであり、特別な存在です。私が20代でヘヴィ・メタルへの情熱を急速に失ったのは、社会人になり23時半まで会社にいる生活に変わったこと、社会情勢の変化に伴う個人的なゴタゴタがあったことが大きな要因ですが、一番の理由は、PANTERAがヘヴィ・メタルを極めてしまった。彼らより優れたメタルバンドは出てこないだろうと。PANTERA直後に出てきたバンドをつまらないと感じてしまったのです。

PANTERAはCowboys From Hellをリリースするまでに4枚アルバムを出しています。最初から尖がっていたのではなくどちらかというとオーソドクスなヘヴィ・メタルを演奏していた時期もありました。しかしながら、全国区になる前からDarrell Abottのギターの巧さは知られていました。私が最初にPANTERAの名前を知ったのは1988年頃です。メタルに詳しい知人が「テキサスにやばいぐらいギターの巧い男前がいる。兄弟でやってるよ。」と教えてくれて、最初に聞いたCDはI AM THE NIGHTでした。ギター以外は取り立てて印象に残りませんでしたが、ギターはずば抜けて巧いと感じました。Cowboys From Hell以降の活躍は皆さまがご存知の通りです。外連味のない伝統的なヘヴィ・メタルを踏襲しながらも、暴力的で尖がってて、圧倒的なスピードとパワーがある。グルーヴ感がたまらない。カビ臭さと無駄な装飾を一掃したモダンなメタル。ヘヴィ・メタルはPANTERAの尖鋭性において究極のかたちに行きついてしまい、その後多くのバンドが迷走するはめになったと私には見受けられました。

2003年にPANTERAは解散。2004年にDimebag Darrellがあの惨劇で世を去ったあと、兄のVinnie Paul(彼も負傷していた)が気丈に振る舞い、日本のヘヴィ・メタル専門誌のインタビューに応じる姿は見てて辛いものがありました。Philip AnselmoとRex Brownは追悼イベントに入場を断られ、Philはご遺族のご意向で葬儀にも参加できなかったのです。その後、Philは引退を口にして表舞台から去っていきました。(後に自身のバンドDOWNを再開)Vinnieは2006年にHELLYEAHを結成して活動再開。メタルシーンで頼れる兄貴として活躍し続けていたものの、2018年に54歳という若さで突然あの世に旅たちました。Darrellが亡くなったときに辛くて泣きました。Vinnieのときには同じかそれ以上に私は泣いたかも。PANTERAの最後の砦がなくなった。PANTERAは完全に終わってしまった。私を含めた多くのメタルファンが同じ想いだったではないでしょうか。その後Philが来日するときには(子どもが小学生で公演に行けませんでしたが)この世に残ったんだから、健康になって、PANTERAの曲をやるならかっこよくやってほしいと願ってました。

ところがです、ところがですよ、世の中何が起こるのかはわからないものです。2022年にPhilとRexを中心にPANTERAの再結成ツアーが行われることが突然発表されました。そして12月に日本のメタルファン達にも衝撃が走りました。LOUD PARK 23のヘッドライナーを再結成したPANTERAが務めるとアナウンスがあったのです。再結成PANTERAは概ね好意的に受け取られたものの、諸手を挙げて喜んだファンばかりではく、毀誉褒貶は激しかったと思います。PANTERAの名曲が聞けるならいい、PANTERAがどういう形であれ復活するのは喜ばしい、Darrellととても仲が良かったZakkがやるならOKという肯定派。アボット兄弟抜きでPANTERAを名乗っていいのか?アボット兄弟のいないPANTERAはPANTERAではないと主張する否定派。私は再結成にもフェスのヘッドライナーにも肯定的でした。アボット兄弟のご遺族が公認している。ギタリストで参加するのはZakk Wylde、ドラマーは Charlie Benante。2人とも大好きなミュージシャン。日本中のPANTERAファンが集まり、PANETRAの名曲で盛り上がることがDarrellとVinceへの供養になる。兄弟の偉業を若い世代へ伝えていく良い機会になると考えたからです。

ヘッドライナーPANTERA 兄弟とファンのための圧巻のライブ
演奏が始まった瞬間に雑音全てが吹き飛んだような衝撃でした。PANTERAの曲のすごさはそこにあると私は思います。なんというか、内臓をわしづかみにされるようなんです。重さとキレがあるんです。PANTERAよりもヘヴィな曲を演奏するバンドはごまんといますが、速さ、重さ、キレ、適度なうねりが複雑な曲の上に成り立つことはレアなのです。前述のとおり私は若い頃に「PANTERAがヘヴィ・メタルの完成形だ」と公言してました。PANTERA以上のメタルってあるんですか?と本気で思っていたのです。

ヘヴィ・メタルのファンが求めるもの。速さ、重さ、演奏の巧さ、キレ、情緒的なメロディ、グルーヴ感、ビジュアル面でのかっこよさ、色々あります。メタルは懐が深くジャンルは細分化されているため同じメタルファンでも、メロディック・デスメタル愛好家、ヘアメタルのファン、グラインドコアよりのマニアでは嗜好が全然違います。PANTERAのすごさははどの層のメタルファンにもアピールしたことだと思います。面倒くさい(*ヘヴィ・メタル界隈では誉め言葉です)メタルファンにしのごの言わせなかった唯一のバンドではないでしょうか。私のリアルな知人でプログレマニアの方がいて「ハードコアは苦手だけどPANTERAだけは好き」という方がいます。理由は兄弟の技量が素晴らしいからとのこと。メロディックなハードロックが好きな友人は「DarrellがかっこいいからPANTERAは好き」とのこと。

今回のライブの演奏に関して。ZakkはZakkらしくDarrellの真似をせずに良かったです。チューニングも素人の私が聞いてもZakkのままで、ギターの構える位置もZakkでした。Zakkは自分らしく演奏することが親友だったDarrellへ供養なんだろうなと管理人は感じました。一方、CharlieはVinceのスタイルに寄せててリスペクトを感じました。私の近くにいた方が「Charlieは前にのめりすぎ。あれじゃAnthraxだ」と苦言を呈してましたが、Anthraxの要で40年やってきたんですよ。当たり前だろうがと思わず言ってしまいそうになりました。力量も熱量もCharlieは素晴らしかったです。(会場でAnthraxのTシャツを着た女性ファン達が目立ってて。だからそういうことなんだよ!と、Charlieに苦言を呈した男性に言って差し上げたくなりました。)

Philは”真面目に準備してきた”のがわかる歌い方で、私は良い意味で衝撃を受けました。「いつもはやらない曲だけどな」とPhilは言ってましたが、アボット兄弟の力量とコンビネーションが最も発揮されていると思える”Use My Third Arm”をやってくれたのも嬉しかったです。よくぞ選んでくれたと目頭が熱くなりました。Planet Caravanでは往年の兄弟の仲の良い姿を思い出して泣いてしまいましたよ。

若いメタルファンの方が「PANTERAってそんなすごいの?ふつうでしょ」とおっしゃってるのをネットで拝見したことがあります。貴方のおっしゃる”ふつう”を作ったのがPANTERAなんですよーと管理人は声を大にして言いたい。今現在活躍しているメタルのバンドで、PANTERAの影響を全然受けてないバンドはほとんどいないでしょう。PANTERAはメタルの究極のかたちを作り、結果的にメタルを変えてしまったんです。圧倒的な技量で伝統的なヘヴィ・メタルの要素を保ちながらも、グルーヴ感を出す、ブレイク・ダウンパートを入れる、クリーンヴォイスとでデスボイス、ハードコアスタイルの歌い方、”Walk”のサビのシンガロングなど、PANTERAがつくった新しさが今のメタルに受け継がれ、前述の若者が”ふつう”と表現するまで浸透したのです。PANTERAの『俗悪』がビルボードで1位になったときに、私は世界が変わった、やっと時代がヘヴィ・メタルに追いついたと感じたものです。世間に寄せることをせずにオリジナリティとヘヴィさを追求し尖がり続けたまま天下を取った唯一のバンドPANTERA。2023年に幕張で再結成ライブをみることができて管理人は嬉しいです!

PANTERAセットリスト
Regular People (Conceit)
Mouth for War
A New Level
Strength Beyond Strength
Becoming
I’m Broken
Use My Third Arm
5 Minutes Alone
This Love
Yesterday Don’t Mean Shit
Fucking Hostile
Cemetery Gates
Planet Caravan
Walk
Domination
Hollow
Cowboys From Hell

改めて感じた在りし日のアボット兄弟の絆、立ち直ったPhil、飄々と活動を続けてるRex、自分のスタイルで愉しんでたZakk、本当に頑張ってくれたCharlie、”Walk”のリ・スペクト!で盛り上がってた新旧PANTERAファン達のことを考えたら胸がいっぱいになりました。PANTERAでヘヴィ・メタルは終わったと思った20代の私は間違ってました。PANTERAから新しいヘヴィ・メタルが生れたのですね。

KREATORについては別の記事で書きます。ブログのタイトルと違うだろとお叱りを受けそうですが、やはり、ロックはライブが最優先だと私は思うのです。またお付き合いいただければ幸いです。

1992年リリース FAR BEYOND DRIVEN『俗悪』の”USE MY THIRD ARM” どこをどうしたらこういう曲になるんだ?!wwと初めて聞いたときに思いました。 とっちらかってるようにみえて、全然とっ散らかってない。知性を感じる。重くて激しくて最強のヘヴィ・メタル。とにかくすごい。アボット兄弟のコンビネーションが素晴らしい。兄Vinnieは弟のDarrellのためにドラムを叩いていたんだなあと感じるんですよ。仲の良い兄弟だったんですよね。R.I.P.

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