Blue Öyster Cultの最新作”The Symbol Remains”から『Tainted Blood:テインテッド・ブラッド』対訳 

ブルー・オイスター・カルト(Blue Öyster Cult)

前回の記事の続きです。Blue Öyster Cultの最新作”The Symbol Remains”から特に好きな曲”Tainted Blood”を取り上げてお伝えします。Richie Castellanoがヴォーカルを担当。今までのBÖCではなかった雰囲気のとても素敵な曲です。対訳と簡単な解説も入れます。

“The Symbol Remains”『ザ・シンボル・リメインズ』
2020年にBlue Öyster Cultは19年ぶりにアルバム”The Symbol Remains” 『ザ・シンボル・リメインズ』をリリースしました。オリジナルメンバーのEric BloomとBuck Dharmaは健在。Albert Bouchardもバックヴォーカル、パーカッションと(皆さま、ここはニンマリ笑うところですよ!)カウベルでゲスト参加しています。大御所バンドの貫禄をみせつけた新作は素晴らしいアルバムです。聴きやすい曲が多く、ここからカルトの世界観にはまる若いロックファンも出てくるのでは?と管理人は期待しています。

“Tainted Blood”『テインテッド・ブラッド
聴きどころの多い新作ですが、特に耳に残ったのは3曲目の”Tanited Blood”です。曲調も歌詞もとてもロマンチック。耳への残り方がわざとらしくない、爽やかなパワーバラード。それでいてカルトが得意としてきた恐怖小説の雰囲気もあるのです。ヴォーカルを担当するのは最年少メンバーのRichie Castellano。

吸血鬼カップルの男性の語りで曲は進みます。相思相愛でカップル歴200年越えのパワーカップルでしたが、女性はアクシデントで命を落としました。今は男性吸血鬼が独りで夜を彷徨ってます。吸血鬼は人を犠牲にして生きながらえる不死の存在。でも、吸血鬼の男性は「永遠の命なんて、惨めなものだ」と訴えます。愛する女性がいないこの世なんて生きている価値がないと。まあ、ずいぶんと自分勝手な物言いだと管理人は思ってしまいますが、男性の女性への想いが深いが故に出てくるセリフなのでしょう。

理詰めではなんともならない残酷な世界で永遠の愛を近いあった男女の吸血鬼。BÖCは吸血鬼テーマの名曲を世に送り出してきました。1978年にリリースされた"Spectres"の"I Love the Night”と"Nosferatu”。どちらもきれいで煌めきを感じる素敵な曲ですね。これらの正当な後継者としてリリースされたのが”Tainted Blood”ではないかと。その観点からも、Richie Castellanoが今後のバンド活動のカギを握る存在だと私は思うのです。

以下、対訳です。
“Tainted Blood” 『テインテッド・ブラッド』
収録アルバム The Symbol Remains 2020年リリース
作詞・作曲 Eric Bloom & Richie Castellano リードボーカル Richie Castellano

We danced among the mortals,
Blind to their despair
As the sweet scent of certainty
Fills the midnight air
死すべき運命の人間達に囲まれて踊った
彼らの絶望には目もくれずに
必然性の甘い香りが

真夜中の空に満ち溢れる 
→印象的なドラム、ギターで曲はスタートします。ヴォーカルはさりげない語り部調。否が応でも曲に引き込まれます。ラテン語由来のmortalは死すべき定めのものを意味し人間全般を表します。不死身の存在であるimmortalの吸血鬼とは対極の存在です。カップルは、命を奪われる人間の絶望感をがっつりスルーして生きていきました。ロマンチックな恋のダンスするように夜を彷徨い、二人の愛の世界に没頭してる様子です。人間側はmortal,despair、吸血鬼側はdance,sweetと対照的に描かれています。ここでのcertaintyは、生き残った男性が背負った業なのか、このまま愛の思い出に生きることが必然であると吸血鬼が今考えているのか?管理人はわかりませんでした。sweet, scent, certaintyと単語の頭で韻を踏んでいるだけかもしれませんね。

I offer first taste to my love as is always
“Tainted blood” She cries and dies
My whole world fades away
いつもそうするように 愛する女性に最初の一口を譲る
「穢れた血!」と彼女は叫んで死ぬ
私の世界すべてが色あせて消えていく

→吸血鬼の女性は穢れた血を飲んで絶命したことがここでわかります。最初の一口を愛する女性にいつも譲っていたのでしょう。自分ではなく女性が息絶えました。愛情が裏目に出でしまったのです。

No one to wipe my bloody tears
The life we had for 200 years
私の血の涙をぬぐってくれる人は誰もいない
私たちが過ごした200年
→この短い節がサビに入る前の橋渡し的な役割を果たしています。リッチーのVoは切なく甘いトーンで印象に残ります。彼らが200年も闇を彷徨いつづけた続いたパワーカップルだとここで明らかになります。bloody tearsとはストレートでかなり生々しい。吸血鬼は吸血鬼なのです。

☆Put a stake through my heart
Throw me out in the light
Do whatever it takes to end this endless night
Without her there’s nothing for me
私の心に杭を打ち付け
太陽のものに晒してくれ
何もしてでも 終わらない夜に終止符を打ってくれ
彼女がいなければ 自分には何もないんだ

☆☆Make the sign of the cross
Wrap mе in silver chains
Do whatever it takеs to end my pain
Without her eternity is misery
十字を切り
銀の鎖で縛ってほしい
何をしてでも 私の苦しみを終わらせてくれ
彼女がいなければ 永遠の命なんて惨めなものだ

→☆、☆☆がサビの部分です。エンディングのフェイドアウトでも繰り返しでてきます。切羽詰まった感じ、臨場感を感じるメロディ。聴きどころです。吸血鬼の男性の苦しみが切々と伝わってきます。吸血鬼の彼女が亡くなった今、生きていても苦しいだけ終わらせたいと吸血鬼の男性は訴えます。吸血鬼退治の手段がいくつも出てきます。銀の鎖はこの曲で初めて知りました。西洋ではメジャーな方法なのかもしれません。

Throughout the many years
Our lives were oh so sweet
But this tainted blood
Has taken everything from me
長い年月の間
私たちの人生はとても甘美なものだった
でも この穢れた血が
私からすべてを奪っていった

No place for me within this world,
The dance is done
No reason to remain, you were the only one
この世界に私の居場所はない
ダンスは終わった
私が存在しつづける理由がない あなたはたった一人の愛する人だった

No one to wipe my bloody tears
The life we had for 200 years
私の涙をぬぐってくれる人は誰もいない
私たちが過ごした200年

Put a stake through my heart
Throw me out in the light
Do whatever it takes to end this endless night
Without her There’s nothing for me
私の心に杭を打ち付け
太陽のものに晒してくれ
何もしてでも 終わらない夜に終止符を打ってくれ
彼女がいなければ 自分には何もないんだ

Make the sign of the cross
Wrap me in silver chains
Do whatever it takes to end my pain
Without her eternity is misery
十字を切り
銀の鎖で縛ってほしい
何をしてでも 私の苦しみを終わらせてくれ
彼女がいなければ 永遠の命なんて惨めなものだ

この曲はロック用語で言うなら「フックのたくさんある」曲。聴きどころ満載。一度聞いた忘れられず耳に残る。そして、また聞いてみようという気になる。良い曲というのはそういうものではないでしょうか?ロマンチックなテーマの曲の場合、水を差すようなセンスの悪さが一つでもあると興覚めして2度と聞く気になれないものです。永遠の愛というベタなテーマを取りあつかっておきながらも、吸血鬼の男性が永遠の命を蔑むというアンチテーゼ的な切り口、優れたメロディ、高い技術の演奏、抜群の歌唱力。今を生きる一流のミュージシャンが作り上げたのです。特に、RichieのVoが素晴らしい。ゴシック小説、ロマンチックで残忍な世界はカルトの得意とするところでしたが、彼はそこに新風を吹き込みました。2020年代にふさわしいこなれ感。軽さ。洒落。頑張ってるけど頑張っていない感じ。

Richieの作曲、作詞の能力とヴォーカルが、Blue Öyster Cultの新しいDimensionを作ったと私は思います。50年活動してきて、まだまだ引き出しがある。Blue Öyster Cultは稀有なロックバンドです。次作でRichieがどのような曲を作り、ベテランのEric、Donaldと表現していくのか。今から楽しみです。大いに期待しようではありませんか!!

“Tainted Blood”のオフィシャルミュージックビデオ。モノトーンのストーリー仕立て。昔の映画を観てる気分になりますね。
https://www.youtube.com/watch?v=8H0iX-_Vts0 

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